近江八景 瀬田の夕照
最近、東海道や中山道を歩く人が増えているのだそうですね。
歩いている人から直接話を聞けたわけではないのが、「NHKの街道てくてく旅・東海道五十三次」の影響で本当に増えているようで、先週の休日のNHKニュースハイライトかなんかで、
『「滋賀県草津市の草津宿街道交流館」で「中山道全行程踏破証」と「草津宿出立・通過証」の発行を4月1日から始める。』
というニュースが流れていました。
googleで検索すると、京都新聞のweb版にもその旨がのっていて、証明書はどちらも歌川広重の浮世絵が「全行程踏破証」は中山道の草津、「出立・通過証」東海道の草津宿の絵を用いているそうです。
「中山道もゴールは京都・三条大橋まででは?」
という気がしないでもないですが、正確には草津が終着点となってるんですね。
まぁ、歩く人の励みになるようであれば、どっちでもいいのかな。
草津市立草津宿街道交流館・国指定史跡草津宿本陣の共通入場券(320円)を買うともらえるそうです。
ちなみに、証明書がどんなものかは草津市役所のHPから確認いただけます。
草津宿街道交流館はともかく、現存し公開されている本陣は数少ないので、史跡草津宿本陣は、なかなか興味深い。いちど行ってみたいと思わせる史跡です。
行ってみたらまた報告しますね。
さて本題。
冒頭の絵、「歌川広重 近江八景 瀬田の夕照」のお話です。
前回、私は、「東海道五十三次の旅6 草津後編」で、この絵の描かれた時代の琵琶湖畔の流通・交通について思いをはせました。
そしてこの「琵琶湖を望む鳥瞰図」を描いた広重の心境について想像しました。
「大量の米を運ぶ丸子船がたくさん浮かんでいてそれは賑やかだった。広重はそれを描いたんだ。」と。
でも、それはおそらく錯誤だったといまは思います。
この絵のことについて詳しくかかれた書籍は見あたりませんが、丸子船の船の数と大津に運ばれた米の数。
この数の年代推移をよーくしらべてみるとどうやら様子が違うようです。
いえ、歴史の中の真実というのはなかなかこれだと言いきることはできないものだと思っているので、
まぁ前回のことも今回のこともそれは想像に過ぎないのですが。
それでも、やっぱり何かおかしい。
そう。
あの絵を見ていてちょーっと気になったのは、実はあの「夕焼け」でした。
もういちど絵を見てみましょう。
近江八景 瀬田の夕照
この琵琶湖の絵は、瀬田の唐橋の位置からみて明らかに「北東」を見て描かれているんです。
この絵が鳥瞰図であるところをみると、空を飛んでいる鳥の目から見た絵ですからすべてが創作なわけで、どこからどこを観た絵を描いてもいいわけなんです。
でもよりによって広重は、「北東」をみてこの絵を描いてある。
要は夕日を背にして描いているのです。
みなさんがもし夕やけの景色を描くとしたら、どの方角をむいて描きますか。
私なら、「西」を向いて描きます。
夕日を描かないにしろ、西の方を見ないと夕焼けは綺麗に見えないのです。
なのに、この絵は「北東」を向いている。
夕焼けの時、北東をみたら綺麗な赤く染まった夕焼けがみれるのだろうか。
それなら、なにも夕焼けを絵のモチーフにしなくても良かったのではないか。
そこまで検証しないでも、この「夕照」。もっと違う意味があるのではないだろうか。
そう思ったのです。
そして、ふと丸子船を思い出した。たしかに最盛期は、各地から敦賀に集められ琵琶湖をわたって大津に届けられていた米は、年間30万石はくだらなかったでしょう。
でもよくかんがえるとそれは最盛期だった。その最盛期といえば、ちょうど歌川広重が江戸で生まれた頃です。
よくよく調べると広重がこの絵を描いた頃はすでに琵琶湖の丸子船の米の輸送は、日本海航路の船での運搬にとってかわられており、なんと輸送量は最盛期の1/10までに激減していたいうことがわかったのです。
つまり、一時期栄華を誇ったこの琵琶湖の交通は、この絵が描かれた頃にはすでに衰退しており、釣瓶落としの夕日のような状況だったわけです。
広重は、その心境を、心象風景を、もののあわれとして「落日」で表現した。
目に見える夕日でなく、夕日を背にして「心の夕焼け」をかいた。
この絵に時間の流れをも描きこめて、人の心の風景まで描こうとしたのではないだろうか。
そう思うのです。
広重の絵は、この時代の同時期に海を越えヨーロッパの「印象派」の画家モネやゴッホ、マネ、達に深い影響を与えたといいます。
情緒あふれる絵を描くことで昔から人々に愛されつづけている歌川広重。
今回、その広重にすこし迫ったような気持ちになりました。
【猫柳ボール】
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